ここ数年マスコミ等で「多頭飼育崩壊」の話題が、よく取り上げられていますが、皆さんご存知でしょうか?
多頭飼育崩壊とは犬や猫などの動物を数多く飼育した結果、繁殖しすぎてしまい飼育ができなくなってしまう状況を指します。
近年全国的に多発していて、今後も増加していくと考えられています。
初期は未熟なブリーダーなどが商用目的において頭数管理を怠った結果として、多頭飼育崩壊を招いたケースがとりあげられることが多かったのですが、今日では、そうしたケースのみならず様々な要因があるようです。なぜこういった事態に陥ってしまうのでしょうか。

多頭飼育崩壊の現状

♦ブリーダーやショップなどの施設
犬猫を多く飼育しているブリーダーやペットショップなどは多頭飼育崩壊が起こりやすいといえるでしょう。
利益を追求するあまり子犬、子猫をたくさん産ませたが売れ残ってしまった場合や、経営トラブルによって債務を負ってしまった場合など、経営放棄と同時に動物の世話を放棄して逃げてしまうことがあります。
ただ、大多数のブリーダーは経営の根幹である頭数管理を怠ると、経営難に陥ることを理解しているため、一部の未熟なブリーダーによって起こる事例であると言えます。
ブリーダーだけでなく近年増加してきた猫カフェなど、動物が多くいる施設はどこでもこの多頭飼育崩壊が起こる可能性があります。
♦飼育ボランティア
施設や個人から飼育放棄された動物を引き取り、新しい里親が見つかるまで一時的に預かる飼育ボランティアは、常時多数の動物を保護している状況にあります。
個人で活動している方は、本人にトラブルが起こってしまうと他に受入れが困難な場合、崩壊につながりやすくなってしまいます。
♦二次崩壊
民間のボランティア団体や動物好きな個人が、崩壊した飼い主にからペットを保護する場合があります。
その中で保護する頭数が許容能力を超えてしまうと、ボランティアが飼育不可能となり、”二次崩壊につながるケースも実際に報告されています。
♦アニマルホーダー
ホーダー(hoarder)とは、物を捨てることができずにためこむ人・片付けられない人という意味があり、アニマルホーダーとは異常な数の動物を自宅などに抱え込んで飼育してしまう人を指します。
アニマルホーダーの一番の問題点は、飼育している本人に飼育崩壊を招いている自覚がないということです。明らかに限度を超えた数の動物を受け入れてしまうことで、衛生面、居住スペース、医療ケア、最低限の餌など手当てができずに、周囲へ感染症や悪臭などの被害をもたらしてしまいます。動物をこうした劣悪な環境にさらしている、いわば虐待をしているという意識がなく、一方で「動物がかわいそう」という気持ちで引き取ることで自らを肯定的にとらえてしまう傾向があります。その為、付近住民からクレームを受けても話し合うこともできないケースがよくあります。
法律上では犬や猫などの動物は所有物とされているため、飼い主本人が所有放棄しなければ行政も介入できません。また、仮に一旦飼い主が放棄して動物たちを保護できたとしても、一番の問題である飼い主の意識が変わらなければ、また同じことが繰り返されてしまいます。

マスコミに取り上げられるケースは、50頭以上の大規模なもので、各地愛護団体のブログなどに取り上げられた小規模な事例を含めると相当な件数になると思われます。
ちなみに、環境省が2016年に行った「地方自治体による動物愛護管理法の施行状況調査」では多頭飼育への苦情が2,199件、そのうち50頭以上の飼育環境にあったのは81件でした。
苦情の内容として、悪臭と騒音で全苦情数の半数以上を占めました。
苦情の原因者は一般の飼い主等が2002件、ブリーダーが111件、ペットショップが27件ということで、一般の多頭飼いでの苦情が多いことが分かります。

多頭飼育崩壊のメカニズム

避妊去勢の処置を行わないまま複数頭を飼育し、しかも自由に繁殖できてしまう状態が続いてしまうと、必然的に増え続けることになります。里親に出すなど貰い手を探すのにも限度があり、手元に置いておく数がどんどん増えてくことになります。
そしてその生まれた子犬も避妊去勢の処置を行わないため、更に頭数が増える結果となります。頭数が増えることにより、1頭あたりの飼育スペースはどんどん圧迫され狭くなる一方です。餌代はもちろん増えることになり、経済的に困窮すると1頭あたりの餌が逆に減る場合もあります。
また、健康管理も行き届かなくなり、毎年の予防接種に加え、病院代がかさむことになります。ますます、経済的に困窮することになり、環境を改善することが出来ない飼い主は生活が苦しくなった原因である犬猫たちを放置してしまうことになります。
多頭飼育崩壊の一例をあげましたが、他にも飼い主の高齢化であったり、災害によって、適切に動物を管理することが出来なくなってしまったり、飼育崩壊につながる要因は様々です。

各自治体の取り組み

飼育崩壊を起こさせない一番の対策は"増やさないこと"です。
ブリーダーやショップなどの施設に対しては、動物の愛護および管理に関する法律によって適切な飼養管理を行うように求められています。それに従わない場合は行政処分が入ります。
こうした動物の命を守る法律が徐々に整備されつつある中で、自治体レベルで対策が講じられている県があります。
最近では神奈川県では県動物保護センター(平塚市)で2018年度に保護した犬猫の殺処分数がゼロと発表しました。
今回で犬は6年間、猫は5年間のゼロ継続を達成したことになります。その背景には、保護された動物を引き取って新たな飼い主を探すといった、地道なボランティアの活動があります。それに加えて、2019年に新たな法律(条令)の制定や施設の設置があります。多頭飼育崩壊の問題を防ぐべく県は条例を改正し、今年10月から10匹以上飼育する場合に飼い主に届け出を義務づけることに踏み切りました。
また、県動物保護センターを6月1日、「県動物愛護センター」として更新すると発表しました。
新施設は「動物を処分するための施設から生かすための施設へ」というコンセプトのもと殺処分設備を撤去。新たに保護した犬猫の環境を考慮し、冷暖房を完備するということです。

これまでにも、10頭以上の飼育する場合の届出義務が設けられているのが 埼玉県・滋賀県。
10頭以上の飼育する場合の届出義務と繁殖制限義務が設けられているのが 山梨県。
6頭以上の飼育する場合の届出義務と周辺住民への説明努力規定があるのが 佐賀県。
知事が指定した規制地域において10頭以上飼育することを禁止しているのが 鳥取県。

このように、ペット飼育頭数の届出義務に関する規定が各地で設けられています。
それだけ、多頭飼育崩壊の件数は増えつつあり、そうした問題が深刻化している現状を反映しているのでしょう。

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